クローズアップ

学校給食で進む地産地消
さまざまな働きかけで「食育」を家庭へ広げよう

[2014/04]



 

 

情報発信だけでなく
大切なのは
家庭との「やりとり」


 

給食食材の開発を通じて
地産池消を推進
「食育」食卓へ広げたい


 

給食通じて伝えたい
暮らしの隣にある価値と
生産者の実情


 

学校給食会が提供する県産品を使った食材は主食47品目、副食44品目に上る。当日は試食も行われた

 学校給食で進む地産池消。学校の食育では給食を「生きた教材」として活用する取り組みが広がっている。食育をその先にある食卓と結びつけるにはどうしたらいいのか。
 北本市にある県学校給食会の「学校給食歴史館」。独立館としては日本初の施設に学校、生産者団体、給食食材の開発・供給団体の代表者らが集まり意見を交わした。

地産池消と「食育」  学校給食でどうつなげる

秋谷 学校給食について、まずは県産品の使用状況などを食材を供給する立場から伺います。

板倉 国内産の政府米から県産米に切り替えたのを契機に、学校給食での地産池消は大きく進みました。平成10年12月のことで、実施には国、県、生産者団体など多くの関係機関の大変な尽力がありました。
 その後、県産小麦100%の地粉うどん・パン、納豆、味噌、醤油などさまざまな食材を開発。例えば、県産小麦100%のパン「さきたまロール」は先駆的な取り組みとして全国から注目され、優良ふるさと食品コンクールで農林水産省総合食料局長賞を受賞しました。
 給食向けに県産品を使用した食材を開発・提供するには難しさもあります。従来の原料を県産品に変えた場合に食感や味が変わることで売れ行きが変動する不安、生産量が限られる県産品の確保と価格、製造や加工にかかる手間と時間、コストなど課題も多いからです。
 しかし、大豆を利用した味噌や醤油などは地産池消への関心が社会的に高まったことに加え、製品の出来そのものが良かったことで高く評価され、地産池消推進の看板にもなりました。取り扱い高も伸びています。

秋谷 学校給食で地産池消が進んでいます。一方、教育現場では「食育」の重要性も注目されています。地産池消と食育をどうつなげるか。給食にはどんな役割があるのでしょう。

横川 食育を推進する上で、学校給食は「生きた教材」ですから、何かを訴えるもの、教えるものにしたいものです。そこで魅力のある給食、多様な交流給食、食に関する指導の充実を掲げて取り組んでいます。
 子どもたちは満たされているからでしょうか、食に対する関心が薄いように感じます。そこで身近な食材、地域で育つ食材を使うなど工夫しています。例えば、内牧地区(春日部市)特産の梨とお茶を使ってオリジナルの「内牧なしちゃパン」を考案したり、地域のNPOの助けを借りて児童が育てたゴマを使ったパンを作ったりして、給食を盛り上げています。
 ほかにも、登下校時に見かける収穫作業から発見する旬の野菜、B級グルメや姉妹都市の食材を使うなど出来る限りのアイデアで楽しませます。
 実は、保護者も食べ物に満ち溢れた世代で、生産に関わった経験が乏しく、食に対する感謝の気持ちが薄いようです。
 重視しているのは、学校の取り組みを家庭へも広げること。そこで、給食のレシピを紹介するだけでなく、家庭で調理した感想や食べた感想を保護者から募集しています。学校から発信するだけでなく家庭と「やりとり」することが大事で、給食と食卓、さらには生産者を結びつける努力を続けています。

秋谷 直売所が大人気で、地産池消に対する消費者の意識も高まっています。その中で、県内産の農畜産物を学校給食へ提供することに、生産者としてどんな期待があるのでしょう。

木口 埼玉は利根川、荒川が育んだ肥沃な土地に恵まれ、農業生産に適した地域です。県内の農業産出額は平成24年度で2012億円、全国18位。中でも里芋や小松菜は全国1位です。
 また、学校給食では、特に米は玄米換算で5700トン使用され、全国1位です。ほかに小麦が玄麦換算で2200トン、大豆が120トンなどとなっています。例えば、大豆はさらに大量の確保が要望されており、契約栽培を進めるなどして期待に応えたいと考えています。
 JAグループさいたまは「暮らしのとなりが産地です」を掲げています。給食は、県内産の農畜産物へさらに関心を高めていただく絶好の機会です。
 今年度は全農のモデル事業として、学校給食食材の一部の製品について、これまで使用されていた県産豚肉から「彩の国黒豚」へ切り替えていただきました。全国的な国産畜産物の消費拡大を推進する中で、埼玉のブランド肉の美味しさを知っていただく機会になったでしょう。
 さらに、生産コスト上昇による価格への影響について、生産者の実情を知ってほしいとの願いがあります。給食は家庭へ、消費者へ理解を求める絶好の場になったと考えています。

学校給食と食卓  どう結びつけるか

秋谷 地産池消や食育を推進する上で、学校給食と家庭を結びつけることが重要のようです。そこで、それぞれの立場から何ができるのかについてご意見を伺います。

板倉 私どもの使命は、学校給食へ安全・安心で美味しい食材を安定的に供給することです。併せて、生産者や児童・生徒を含めた給食関係者の橋渡し役でもあると考えています。
 中でも、県産品の素晴らしさを家庭へ紹介するため県や県教委、JAグループさいたまと連携してリーフレットを作成し、児童・生徒を通じて配布しています。発行部数は毎回73万部ほどになり、県産農畜産物の紹介や伝統野菜などをテーマに取り上げて好評をいただいています。

横川 その資料を校内に掲出するなど活用しています。内容が良く、関心を高めるきっかけになっているようで「その食材を学校給食に使ってほしい」などの意見が寄せられます。
 生産者を招いた授業もあります。生産者から直接話を聞くことで、子どもたちが関心の幅を広げているのがよく分かり、これからもっと機会を増やしたいと考えています。

木口 多くのJAには女性部があります。地場の農産物を使った料理講習会を開いて学び、その知識を地域へさらに広める取り組みを進めています。事例はまだ少ないですが、中には小学生向けの料理講習会もあります。
 県内の小中学校の7割以上が農業体験を取り入れていると聞いています。地域の農業者が学校と、あるいは地域社会とどう関わるか、コミュニティを再生する上でも重要な課題だろうと考えており、苗や肥料などの資材の提供に協力しています。

横川 保護者からは、野菜を調理するには時間がかかるとの声もあり、忙しい生活の中では料理に手間をかけるのが難しくなっているようです。
 そこで、今後は学校給食を通して、家庭の食生活などを提案したいと考えています。そのためには、私自身にもっと研究や勉強が必要ですので、より一層の情報提供をお願いします。

板倉 食事は単にとれば良いわけではないでしょう。心身の成長や健康の保持・増進などのために望ましい栄養や食事のとり方を理解すること、自ら管理する能力を身につけることが大事です。家庭、学校、地域、生産者など食に関わりのある多種多様な方々や機関が役割と責任を担うのでしょうが、基本は家庭にあります。
 食育推進の支援は、私どもの大切な役割でもあります。親子で参加する産地見学会や料理教室などの体験事業、リーフレットやポスターでの情報提供などを通じて、家庭での食育の推進に今後も積極的に関わっていきたいと考えています。

秋谷 今後も取り組みを続ける必要がありそうです。今日はありがとうございました。