クローズアップ

体験通して育てる「生きる力」

[2013/09]



文化祭へ向け特製クッキー作りに熱が入る。「買っていただける」品質に焼き上げるにはコツがある。「先輩から後輩へ経験を受け継ぐのが難しい」と顧問の奥直子先生。(滑川高校提供)

 

収穫した夏野菜(滑川高校提供)

 

畑仕事は重労働だが、収穫と食べる喜びは格別だ(滑川高校提供)

合宿で食と知識学ぶ 滑川総合生活部

  運動部や吹奏楽部などの合宿は耳にするが、生活系の部活動ではほとんど聞かない。夏合宿が恒例行事という県立滑川総合高校(勝又健司校長)の生活部を訪ねた。普段は料理やお菓子作り、手芸など家庭科で学ぶ分野で活動している生活部。合宿だけでなく、校内にある畑を耕し育てた野菜で料理の腕を磨いてもいるという。生活部ってどんな部活動なんだろう。

 調理台に集められたたくさんの夏野菜。ゴーヤやキュウリ、トマト、オクラ、カボチャなど種類も豊富だ。部員が自宅から持ち寄ったもので、大きさも形も不揃いだが、新鮮なものばかり。今年の合宿は1泊2日。不足の材料は購入するものの、持参した米と合わせて、これらの食材で4食分を賄う。

 さあ、献立を考えよう。2日間の食事をどう組み立てるか、集まった食材を元にプランを立てることから合宿は始まる。生活部の顧問は、家庭科の北原昌代先生と奥直子先生。合宿は、北原先生が顧問になった5年前から続く夏の恒例行事だ。

「献立は事前に決めません。手に入った食材と、その日の気温や体調などを考慮して作るのが毎日の食事だから。珍しい料理を覚えるよりも現場の状況に合わせて考える力を養うのが、合宿の目的」

 部員は合宿中、料理して食べて片付けることを繰り返す。部長の山下涼夏さん(2年)は振り返ってこう話す。

「部長になって日が浅いし、1年生は経験が足りず、予定通りにはなかなか。それでもしっかり作って、毎回がっつり食べたので、普段の食生活を振り返る機会になった。例えば朝食、きちんと食べていないことに気づいて反省しました」

夏合宿に畑仕事も 活動の場を広げる

 食事と食事の合間には外部から講師を招いて学ぶ。今年は県牛乳普及協会の協力を得て、管理栄養士の五十幡由美さんに講議と調理指導を依頼した。

 ニンジンのビタミンは脂溶性で牛乳と相性が良く、吸収しやすくなるなどの知識を学び、すりおろしたニンジンを入れてミルクライスを炊くなど、実習と知識を結びつける。

 生活部が畑を作っていると聞いた五十幡さんは驚いたようすでこう話す。

「自分で育てた野菜は形も大きさもバラバラで、実の締りも皮の厚みも違うから、美味しく食べるにはコツがいる。それを学ぶのは経験ですね。

 また、畑づくりは農薬などについても考える機会になるでしょう。毎日積み重ねる食だからこそ、経験と知識を結びつけて考えてほしい。生活部でさまざまな経験ができるから、生徒は幸せだと思います」

 北原先生は、待つのではなくまず始めようと呼びかける。畑や合宿だけでなく、大学との研究、小学校との交流など活動の場を一つでも多く作ろうと苦心してきた。

「とにかく楽しくがモットー。たくさんの人と関わりながら、さまざまな体験を通して、考えて行動する力を養ってほしい。それが生きる力になる」