クローズアップ

授業が食卓の未来を変える

[2012/02]



食品群と栄養素のグラフから誰の食事かを推理する。
授業はクイズ感覚で進む

 

授業を終えた大宮南高校の2年生ら

出前授業を活用した食育

 食卓の風景は、昭和30年代以降大きく変わった。肉やパン、乳製品などを摂るようになって洋風化が進み、即席めんやカップめんなど手軽な食品も次々に登場した。今やコンビニやファミレスは24時間営業が珍しくなく、出来合いの惣菜や調理済み食品を買って来て家で食べる「中食」もよく見る食卓になった。

 食育基本法が施行されて、学習指導要領にも食育の重要性が盛り込まれた。教室でも食育が進むが、知識と実際の食生活はなかなか結びつかない。学校の食育と家庭の食育をつなげるにはどうしたらいいのか、授業で食育に取り組むには何が必要なのか。今、学校で未来の食卓を変える試みが続いている。

家庭科 生徒の体と食をつなげる工夫

 ある高校生3人の1日の食事を写真入りで黒板に貼り出した。朝食はパンとハムエッグにミルクコーヒー、昼食は丼物とフルーツゼリーなど若者にありがちなメニューが並んでいる。

「昼にポテトチップスなんてありえない」
「朝はもっと食べたほうがいいと思う」

 この食事をどう思う?教壇からの問いかけに生徒は様々な反応をみせる。

 県立大宮南高校(桑原幸男校長)は、2年生を対象に一風変わった家庭科の授業を行った。骨密度の測定と管理栄養士による講義を組み合わせた内容で、埼玉県牛乳普及協会(島村功作会長)が数年前から手がけている無料の「出前授業」だ。

 家庭科の村山恵美子教諭は授業の狙いをこう話す。

「生徒は骨密度測定で自分の体の状態を客観的に知り、専門家の講義で知識を深める。この体験が刺激になって、家庭科でこれまで学んできた知識を自分の体や生活のこととして捉えてほしい」

 講義が中心の普段の授業だけでは、知識と生徒自身の食生活との結びつきが弱いと感じている。自分の体の状態が客観的に分かる骨密度測定がそのきっかけになるのではと期待をかける。

 測定後の授業はグループワークが中心。黒板に貼られた3人の食事について改善点を話し合い、フリップに書いて発表した。指導に当たった管理栄養士の時田美恵子さんは授業の手応えをこう話す。

「骨密度を測定すると生徒の関心や意欲を引き出しやすくなるから、グループワークのような参加型授業が効果的。たくさんの改善点に気づき、食事の取り方の工夫にまで考えが及び、自分事として受け止めてもらえたと思う」

 こうした授業に、生産者団体も強い関心を寄せる。この日、見学に訪れた関東生乳販売農業協同組合連合会の大崎頼子さんは、生徒の反応の良さに目を見張った。

「真剣に考える生徒の姿に感心した。家庭科と連携し、学校の食育を支援する取り組みは大変に勉強になった。今後の参考にしたい」

 食育に詳しい桐生大学の笠原賀子教授は、授業のポイントをこう指摘する。

「科学的な根拠に基づくと納得して知識が身につく。さらに感動することが、自ら考える力になる」