クローズアップ

地域の農を地域で支える

[2011/09]



生徒が育てた品種「ピオーネ」の収穫。丹精込めて栽培した自慢の ぶどうが雪くまシロップになる。地域では多くのファンが待っている

 

なご味の期間限定雪くま「ピオーネの雪」

消費者の声を届けよう

 今年3月、「6次産業化法」が施行された。地域の1次産業と関連する2次(加工)、3次産業(販売)を融合して新しい地域ビジネスの創出を目指す。今、地域農業を再生するカギとして注目されている。

 一方、興味深いプロジェクトが高校の産業教育分野で始まった。高校生と農業生産者、企業や商店が連携し新しい商品を開発、さらに加工から販売までを手がける。高校生は専門性を核に、実際のビジネスに近い場で幅広い分野を学ぶ。就職や進学など、高校生の将来設計に役立てるのが狙いだ。このプロジェクトに自ら栽培したブドウで挑む高校生と、それを支える地域の取り組みに注目する。

ぶどうシロップで農ビジネス学ぶ-熊農生

  猛暑で知られる熊谷市。日本一の暑さを逆手にとったB級グルメの代表格が、かき氷「雪くま」だ。昨年の夏、県立熊谷農業高校の生徒が栽培したブドウから作ったシロップを使い、話題になった。

 レシピは高校生が考案し、店の意見を聞いて改良を重ねた。上品な甘味と酸味が特長で、甘く煮た実をトッピングして見た目も涼しい。

 8月、関東地区学校農業クラブ連盟大会が深谷市で開かれた。県大会を勝ち抜き出場した同校が、その取り組みを発表。壇上に立った3年生の北山櫻さんと阿部祥太さんは冒頭でこう訴えた。

「みなさんは、知っていますか?私たちが育てているぶどうの中で、粒が欠けた物や色形が悪い物などは全て捨てられています」

 生徒が栽培するブドウは、「2割ほどが売り物にならない」。果樹は野菜に比べ、必要な手入れが待ったなしで栽培が難しい。作業の中心となる3年生は、夏の大会を控えた部活動と、待ってくれない作業との両立に苦悩する。

 B級品を有効に使いたいと始まったプロジェクトに、生徒たちは街の活性化に一役買いたいとの思いも重ねた。市役所が仲介役となり、生徒と地元の店舗が連携。「ブドウシロップ!雪くま大作戦」は2回目の夏を迎えた。

 指導に当たっている矢作敏雄先生はこう話す。

 「技術の未熟な生徒が栽培するため品質を保ち、収量を確保するのが難しい。地域のみなさんに支えられている面も大きい」

 高校生と地域との連携は、採算性よりも応援する気持ちを優先することも多い。「それでは長続きしない」との厳しい声も確かにある。

 今年もシロップを扱う「こうなん農産加工倶楽部なご味」の宇治川文子さんは言う。
「最初は応援する気持ちが強かったが、きちんと利益が出る。今年も早くから問い合わせがあった。当店ではもう話題づくりではなく、夏の目玉、定番商品だ」

 一方、果樹専攻で3年生の片山準さんは、地域の声を聞く機会が少ない、と話す。
「作業の忙しさに加えて、プロジェクトに参加し苦労もあったが、加工や販売に関わることで多くを学んだ。お店やお客さまの声が本当にうれしい。苦労が報われる」

 生産だけでなく加工、販売までを手がける農業の「6次産業化」が注目される。農業再生のカギは、消費者の声を届けることかもしれない。