クローズアップ

『食』を支える地域の仕組みを

[2011/06]



新江さん(左から2人目)を囲んで最終の会合。盛り付け方法が検討されたほか、付け合わせやセットドリンクの種類などを確認した


これまでに何度も試作と試食が繰り返された

 きょうは牛乳の日―。国連食糧農業機関(FAO)は2001年に6月1日を「世界牛乳の日」として提唱した。日本では08年に、酪農乳業団体がこれに合わせて「牛乳の日」を制定。6月を「牛乳月間」として、関係機関が毎年全国各地でPR活動を展開している。

 県内では、埼玉県牛乳普及協会(細野邦彦会長理事)が中心となって生産者団体や乳業団体などと初年度から本腰を入れてきた。人口720万人の大消費地にあって本県の酪農は都市近郊型。消費者と生産者が近在する特徴を生かして、酪農家や乳業団体が消費者である子どもたちや親子連れ、高校生などへ直接、思いを伝える先進的な取り組みで全国的にも注目を集めてきた。

 今年は、男子高校生が考案した牛乳料理を高校、生産者、地域のお店がタッグを組んで商品化する試みを手がける。地産地消の推進やご当地グルメブームを追い風に、農や食を地域で支える仕組みづくりを進めるのが狙いだ。「もっと牛乳を飲もう!」と知恵を絞り、あの手この手で消費拡大に取り組む元気な関係者の姿にスポットを当てる。

 高校生が考案した牛乳たっぷりのスイーツはいかが?県立秩父農工科学高校3年生の新江友基さんが作ったレシピを元に誕生した「牛乳のごま揚げドーナツ」の販売が「牛乳の日」のきょう、深谷市荒川にあるカフェ「床とこ」で始まる。

 商品化のきっかけは、埼玉県牛乳普及協会(細野邦彦会長理事)が昨年開催した料理コンクールで、新江さんが県代表になったことだった。商品化を呼びかけた同協会の岡部勇専務理事はその思いをこう語る。
「地元の高校生が作ったアイデア料理を、生産者や地域の店舗、学校が連携して商品化を目指し、地域のみなさんに食べていただいて、農業や食が身近にあることの価値を見直してもらうこと。地域全体で支える仕組みをつくることが大切だ。そうした中で、消費が低迷する牛乳の美味しさや栄養的な価値を見直してもれえればうれしい」

 販売に協力するカフェは花園ショッピングセンター・ハーズ(吉岡虎市社長)が経営する。県内でも酪農が盛んな大里地区にあることから牛乳販売に力を入れており参画を決めた。学校と店舗の地域連携に全農県本部や関東生乳販連などの生産者団体も支援を決め、商品化プロジェクトは一気に加速した。

 関係者が集まった初の会合は今年1月。その席で、新江さんが通う高校の野沢雅美校長(当時)はこう挨拶した。
「商品を作りだすことは学校教育の場では難しい。生徒の未熟なアイデアであればなおさらだが、地域のみなさんの協力でそれを目指せることに感謝したい。実現すれば生徒の将来へ大きな糧となるものと期待している」

 高校生のアイデアを生かしながら商品として成立させるにはどうしたらいいか。関係者はこれまで試食とレシピの改良を重ねてきた。考案者の新江さんはこう話す。
「お金を支払って食べてもらうことの厳しさを知った思いがする。自分のアイデアがたくさんの人に関わってもらって、素晴らしいお菓子になった。ぜひ多くの人に食べてほしい」

 酪農生産者と学校、地域の店舗が力を合わせ高校生を応援して誕生したミルクスイーツ。地域の元気を応援する心意気までを含めて味わえば、コクのある風味が一段と深まるはず。販売期間は牛乳月間の今月いっぱい。1日30食の限定メニューとして提供される。