クローズアップ

「農」を見直し「食」の心を育てよう

[2010/06]



収穫体験には都市部からたくさんの人が参加する。生産者と消費者が理解を深める絶好の機会だ


生産者が講師を務める体験学習=女子栄養大学(坂戸市)

 農林水産省が発表した平成20年度の日本の食料自給率は41%(カロリーベース)。食料安全保障の立場からは自給率50%以上が望ましいとされ、その向上が求められている。

 人口が多く耕地面積の少ない埼玉県の自給率は全国でも下位だが、県内産の農産物には全国上位の生産量を誇る作物も少なくない。地産地消や食の安全・安心への関心が高まる中で、「生産者と消費者が喜びを共有できる」ことがこれからの農業の姿。こうした中で、生産地と消費地が近いのが埼玉の魅力だ。この特徴を生かして、「食」や「農」をテーマにした活動が県内各地で盛んになっている。

 埼玉新聞は「ふるさとの食と農キャンペーン」を展開し、地産地消や食育などを利用した国産食品、特に県内産の消費拡大を促す活動に注目する。キャンペーンは埼玉県牛乳普及協会(細野邦彦会長)の特別協力を得てイベントなどを通して複合的に取り組み、食や農を巡るさまざまな声を読者へ届ける。

 農林水産省が発表した都道府県別の食料自給率(カロリーベース)をみると、埼玉県は平成20年度11%(概算値)で全国44位。自給率は一般的にカロリーベースで計る。都道府県別では県民が食べた食料のカロリーのうち、県内で生産された食料のカロリーの割合を示す。計算上、人口が多いほど数字は低くなる傾向がある。

 埼玉は県民が食べる食料の89%を他県や海外に頼る計算だが、消費者の意識はどうだろうか。埼玉新聞社と県牛乳普及協会が共同で行った食に関する意識調査では「地元で採れる農産物は安心だと思う」が6割を超えた。

 地産地消への関心が高まる中で、食卓と産地をつなぐ取り組みが盛んだ。その代表格が採りたての農産物が並ぶ直売所。国の資料によれば、直売所は全国に1万3500カ所以上あり、年間売上高は平均で1億円だ。大消費地である県内には全国屈指の売り上げを誇る直売所もある。

 また、地産地消コーナーを設ける量販店も増えている。深谷市にある大手スーパーの販促担当者はこう言う。

「長く愛される店でないと生き残れない。子どもの頃から利用してもらい、ふるさとの店として記憶してもらうことが大事。地元とのつながりはこれからの時代に欠かせないキーワードで、地産地消はその重要な手がかりだ」

 一方、こんな指摘もある。元酪農家で、牛乳の応援歌で消費拡大を訴えながら全国を旅している村川徳浩さんはこう話す。

「牛乳の消費低迷で生産者の多くが逆境にある。関係者はPRに必死だが、消費がなかなか上向かない状況に手をこまねいているように感じる。旅を通して、生産地である地方の声を、消費地である都会へ届ける必要性を強く思う。それには生産者や乳業会社、小売業者などが連携して取り組むことが必要だ」

 6月は食育月間。食育基本法は都市と農山漁村の共生、消費者と生産者の信頼関係の構築などを課題として指摘する。施行から約5年、食育という言葉は国民の75・8%まで浸透した。今こそ農の大切さを見直し、食に対する感謝の心を育てたい。